介護施設長のためのAI活用

介護施設長のためのAI活用

「ChatGPTって、介護施設で何に使えるの?」
最近、介護事業所の経営者さんや施設長さんから、こんな質問をいただくことが増えました。
AIという言葉を聞くと、

  • 難しそう
  • パソコンに詳しい人向け
  • 介護の現場では使えなさそう
  • 個人情報が心配

という印象を持つ方も多いと思います。でも実際には、ChatGPTは介護そのものをAIに任せるための道具ではありません。介護施設で特に役立つのは、「文章を考える」「調べる」「整理する」「たたき台を作る」といった、施設長や管理者が毎日行っている仕事です。うまく使えば、今まで30分かかっていた仕事が5分、1時間かかっていた仕事が10分になることもあります。今回は、介護施設でChatGPTをどのように使えるのか、具体的に紹介します。

1.職員へのお知らせ文を作る

介護施設では、職員向けの文章を作る機会が非常に多くあります。例えば、「感染症対策について職員に注意喚起したい」とChatGPTに伝えるだけでも文章を作ってくれます。さらに、「怖い文章にならないように」「施設長から職員へ伝える文章にして」「LINEで送れる長さにして」と伝えれば、用途に合わせて文章を調整できます。施設長がゼロから文章を考える必要がなくなります。

2.家族への案内文を作る

家族向けの文章は、特に言葉遣いに気を使います。例えば、

  • 面会方法の変更
  • 感染症発生時のお知らせ
  • 利用料金変更
  • 行事のお知らせ
  • 持ち物のお願い
  • 看取りについての説明

などです。ChatGPTに、「家族に不安を与えない表現にしてください」と伝えるだけでも、かなり文章の印象が変わります。文章作成が苦手な管理者にとっては、非常に便利な使い方です。

3.会議の議事録を作る

個人的に、介護施設でかなり効果が大きいと思っているのが議事録作成です。介護施設では、

  • 職員会議
  • ユニット会議
  • リーダー会議
  • 委員会
  • ケース会議
  • サービス担当者会議

など、多くの会議があります。そして、そのたびに議事録を作ります。会議内容をメモしたものをChatGPTに渡して、「議事録形式にまとめて」と指示すれば、文章を整理してくれます。さらに音声文字起こしツールなどと組み合わせれば、会議→録音→文字起こし→ChatGPTで議事録作成という流れも作れます。今まで1時間かかっていた議事録作成が、大幅に短縮できる可能性があります。

4.事故報告書の文章を整理する

事故報告書を書くとき、「何を書けばいいのか分からない」という職員は少なくありません。例えば、「14時20分、居室前で転倒しているところを職員が発見。右肘に発赤あり。看護師確認。家族へ連絡。」というメモをもとに、「事故報告書として分かりやすく整理してください」とChatGPTに依頼できます。さらに、「原因」「再発防止策」「今後確認すべき点」について考える補助として使うこともできます。もちろん、最終的な事故原因や対策をAI任せにするのではなく、職員が考えるための補助役として使うことが大切です。

5.研修資料を作る

介護施設では法定研修をはじめ、多くの研修が必要です。例えば、

  • 虐待防止
  • 身体拘束適正化
  • 感染症対策
  • BCP
  • 認知症
  • 褥瘡予防
  • ハラスメント
  • 事故防止
  • 個人情報保護

などです。ChatGPTに、「介護職員向けに、虐待防止研修を30分でできる内容にしてください」と依頼すれば、研修資料のたたき台を作ることができます。さらに、「新人職員でも分かる表現にして」「最後に理解度チェックを5問入れて」と追加すれば、研修内容を調整できます。

6.求人原稿を作る

介護施設の求人票を見ると、「アットホームな職場です」「やりがいのある仕事です」という似たような文章が多くあります。しかし、本当に応募者が知りたいのは、

  • 休みは取れるのか
  • 残業は多いのか
  • 人間関係はどうなのか
  • 未経験でも大丈夫なのか
  • 子育てしながら働けるのか
  • 夜勤は何人体制なのか

といった情報です。施設の特徴をChatGPTに伝えて、「応募したくなる求人文章にしてください」と依頼すると、求人原稿を作る手助けになります。

7.ケアのアイデアを考える

例えば、「デイサービスでできる夏祭りレクリエーションを20個考えて」「認知症の方でも参加しやすいレクリエーションを考えて」「車椅子の方も参加できるゲームを考えて」といった使い方もできます。行事担当者が毎回ゼロからアイデアを考える負担を減らせます。

8.業務マニュアルを作る

介護施設では、「○○さんしか分からない仕事」が意外とたくさんあります。これは非常に危険です。例えば、

  • 新規入居時の手順
  • 退居時の手順
  • 入院時の対応
  • 事故発生時
  • 救急搬送時
  • 家族への連絡方法
  • 新人職員の教育
  • 請求業務

などです。普段行っている手順を箇条書きにしてChatGPTへ渡し、「新人職員向けのマニュアルにしてください」と依頼すると、業務の標準化にも利用できます。

9.行政への質問を整理する

介護保険制度は非常に複雑です。市町村や都道府県に質問するときも、「何をどう聞けばいいのか分からない」ということがあります。そんなとき、「この内容について市役所に確認したいので、質問事項を整理してください」とChatGPTに相談すると便利です。質問内容を整理してから行政へ問い合わせることで、回答も得やすくなります。

10.施設長の「相談相手」にする

実は、これがChatGPTの一番便利な使い方かもしれません。施設長という仕事は、意外と相談相手がいません。職員には相談しにくい。経営者にも言いにくい。他施設の施設長とも毎日話せるわけではありません。そんなとき、「職員からこんな相談を受けた。施設長としてどう対応すればいい?」「職員同士が揉めている。どんな順番で対応すればいい?」「稼働率が下がっている。原因を一緒に整理して」という使い方ができます。ChatGPTは決断そのものをするわけではありません。しかし、頭の中を整理する壁打ち相手としては非常に優秀です。

まずは「文章作成」から使ってみる

ChatGPTを使い始めるときに、いきなり難しいことをする必要はありません。まずは、「この文章を読みやすくして」から始めるのがおすすめです。例えば、職員向けに自分で書いた文章をChatGPTに貼り付けて、「もう少し優しい表現にしてください」と入力してみてください。これだけでも、「なるほど、こう使うのか」と実感できると思います。

ChatGPTに仕事を頼むコツ

ChatGPTをうまく使うポイントは、難しい命令文を書くことではありません。普通に人へ仕事を頼むように伝えれば大丈夫です。例えば、「介護施設の施設長として考えてください」「新人介護職員にも分かる文章にしてください」「家族向けなので丁寧な表現にしてください」「A4用紙1枚程度にしてください」など、条件を伝えてください。条件を具体的にするほど、欲しい回答に近づきます。

個人情報には注意する

介護施設でChatGPTを利用するときに、特に注意したいのが個人情報です。利用者の、

  • 氏名
  • 住所
  • 電話番号
  • 生年月日
  • 病歴
  • 家族情報

などを、そのまま入力するのは避けるべきです。例えば、「山田太郎さん」ではなく、「利用者A」として相談するなど、個人が特定できない形にして使うことが基本です。また、施設として利用する場合は、組織内でAI利用のルールを決めておくことも重要です。

ChatGPTは介護職員を減らすためのAIではない

私は、ChatGPTは、介護職員の仕事を奪うためのAIではなく、介護職員が介護に集中するためのAIだと考えています。介護職員が本来時間を使うべきなのは、パソコンに向かって文章を入力することではありません。利用者と話す。状態を観察する。職員同士で情報共有する。家族と関係を作る。こうした仕事に時間を使うべきです。そのために、文章作成や情報整理などをAIに手伝ってもらう。これが、介護施設におけるAI活用の第一歩だと思います。

介護施設でChatGPTに任せられる仕事は、まだまだあります

今回紹介したのは一部です。実際には、採用、教育、事故防止、家族対応、行政対応、加算、請求、業務改善、経営分析など、さまざまな場面で使えます。「この仕事、ChatGPTに手伝ってもらえないかな?」と思ったら、とりあえず聞いてみる。それだけでも構いません。介護業界は今後、人材不足がさらに大きな課題になります。だからこそ、人がやらなくてもいい仕事を減らし、人にしかできない介護に時間を使う。AIは、そのための非常に強力な道具になると思います。このマガジンでは今後も、「介護現場ですぐ使えるChatGPT活用方法」を、できるだけ難しい言葉を使わず、具体例を交えながら紹介していきます。


初出:note記事「介護施設長のためのAI活用」

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